企業にお勤めの会社員の皆様方は、自身が子供の頃の暮らしに比べ生活水準がえらく低いんじゃないかと感じてはいないだろうか。
年々上昇する社会保険料と、目減りしていく年収を目の当たりにし、自由に使えるお金が減っている、自分の世代はえらく損をしている、と感じてはいないだろうか。
そこで以下では、社会保険料、租税、手取り収入の推移を示し、年収毎にどれだけ自由に使えるお金が変化しているかを検証していく。
社会保険料の推移
厚生年金保険料率の推移
以下のグラフは、日本年金機構の厚生年金保険料率表を基に作成した。【日本年金機構:厚生年金保険料率と標準報酬月額等級の変遷表】
2003年(平成15年)に厚生年金保険料率の大幅な低下が見られるが、これは同年4月に導入された総報酬制の導入によるもので、前年までは賞与に対する保険料率が1%(自己負担率は0.5%)と低かった。そのため、年収に対する保険料は実質下がっていない。
厚生年金保険料(年収別)の推移
厚生年金保険料(~2002年) = 12✕(年収÷17)✕厚生年金保険料率 + 5✕(年収÷17)✕0.005
厚生年金保険料(2003年~) = 年収✕厚生年金保険料率
雇用保険料率の推移
以下のグラフは、厚生労働省の職業安定分科会雇用保険部会審議会資料と、川村法律事務所の雇用保険料率を基に作成した。【厚生労働省:職業安定分科会雇用保険部会審議会資料、川村法律事務所:雇用保険料率】
雇用保険料率は、収入と支出をバランスするように決定されるため、上グラフのように、不況期に高く、好況期に低く設定されていることがわかる。
健康保険料率の推移
健康保険は医療給付や手当金などを支給して、生活を安定させることを目的にした保険制度。またその保険料は、事業主との折半である。【全国健康保険協会:制度の目的】以下のグラフは、全国健康保険協会の保険料率の変遷を基に作成した。【全国健康保険協会:保険料率の変遷】
健康保険料(年収別)の推移
健康保険料は所属自治体によって異なり、また扶養家族などの因子に影響されるが、簡単のため単身者を対象にした以下の計算式を用いた。【経営ハッカー:国民健康保険料の計算方法をわかりやすく解説|知っておきたい税の基本】健康保険料 = {年収 - 給与所得控除 - 基礎控除(33万)}×健康保険料率
また、給与所得控除は国税庁の給与所得控除額と横浜の税理士中山のCoffee Breakにおける所得税大幅増税 その2 - 給与所得控除に基づく。【国税庁:給与所得控除額、横浜の税理士中山のCoffee Break:所得税大幅増税 その2 - 給与所得控除】
社会保険料(年収別)の推移
以上の各保険料を足し上げて算出したのが以下のグラフで、その計算式は以下。社会保険料 = 健康保険料 + 厚生年金保険料 + 年収×雇用保険料率
以上の算出において、現在2015年と、父親世代が自身と同年代だった1990年の社会保険料の差額を算出すると、以下のようになった。
- 年収150万: 67860円
- 年収350万: 149960円
- 年収550万: 264650円
- 年収650万: 285950円
- 年収750万: 367850円
- 年収950万: 466650円
所得税の推移
所得税は、個人の収入から必要経費を引いた利益である所得に対して課される税金。【ひらく・ナビ20:給与から毎月引かれている所得税とは?】所得税率(年収別)の推移
所得税率は名古屋の税理士の所得税-住民税の税率の推移に基づき作成した。【名古屋の税理士:所得税-住民税の税率の推移】所得税額(年収別)の推移
所得税額は会計ソフト「MFクラウド会計」の【所得税の計算方法】独立や起業前に確認しておきたい計算のポイントまとめを参考にしつつ、簡単のため以下の計算式で算出した。【会計ソフト「MFクラウド会計」:【所得税の計算方法】独立や起業前に確認しておきたい計算のポイントまとめ】課税所得 = 年収 - 給与所得控除 - 基礎控除(38万) - 社会保険料
所得税額 = (350万以下✕150万の所得税率) + {(350万超~550万以下)✕350万の所得税率} + {(550万超~650万以下)✕550万の所得税率} + {(650万超~750万以下)✕650万の所得税率} + {(750万超~950万以下)✕750万の所得税率}
※所得税額は課税所得の350万円以下、350万超~550万以下、550万超~650万以下、650万超~750万以下、750万超~950万以下部の税額の総和とした。
以上の算出において、現在2015年と1990年の所得税額の差額を算出すると、以下のようになった。
- 年収150万:- 24300円
- 年収350万:- 75000円
- 年収550万:-287700円
- 年収650万:-362200円
- 年収750万:-248600円
- 年収950万:-351500円
住民税の推移
住民税は住所地の都道府県の地方税である県民税と、市町村の地方税である市民税の合計したもの。住民税率(年収別)の推移
住民税率は名古屋の税理士の所得税-住民税の税率の推移、及び内閣府の個人住民税についてに基づき作成した。【名古屋の税理士:所得税-住民税の税率の推移、内閣府:個人住民税について】住民税額(年収別)の推移
住民税額は、住民税の解説サイトの住民税額の計算方法を参考にしつつ、簡単のため以下の計算式を用いて算出した。【住民税の解説サイト:住民税額の計算方法】課税所得 = 年収 - 給与所得控除 - 基礎控除(33万) - 社会保険料
住民税額 = 課税所得✕住民税率
以上の算出において、現在2015年と1990年の住民税額の差額を算出すると、以下のようになった。
- 年収150万:- 6790円
- 年収350万:- 50000円
- 年収550万:-207130円
- 年収650万:-341120円
- 年収750万:-324830円
- 年収950万:-415730円
手取り収入
手取り収入(年収別)
以上の社会保険料、所得税、住民税の結果を基に作成した手取り収入のグラフが以下である。消費者物価指数
物価換算手取り収入(年収別)
手取り収入に消費税の効果をも含む消費者物価指数を反映させた、物価換算手取り収入が以下のグラフである。また以下のグラフでは、2015年時点の手取り収入を基準とした、以下の計算式を用いた。物価換算収入 = 手取り収入 ÷ 消費者物価指数
以上の結果から、現在2015年と1990年の物価換算収入の差額を算出すると、以下のようになった。
- 年収150万:-101400円
- 年収350万:-165410円
- 年収550万: 25910円
- 年収650万: 192430円
- 年収750万:- 50320円
- 年収950万:- 13070円